【涙腺崩壊】全裸の俺がこたつに隠れて命を救われた話

 

 

「お兄ちゃんごめ~ん寝てたぁ、、、」

 

さとみはそう言ってドアを開けた

「ごめんごめん起こしちゃった?今日、鍵忘れちゃってさ~」

 

クッパは躊躇なくリビングに入ってきた。

 

後から聞いた話だが、クッパは検便を取りに一旦帰ってきたそうだ

 

とんだクソ野郎だ

 

クッパがリビングを歩く度にこたつの中越しに床がきしむのが分かった。

 

さとみは冷静を装い、

「お兄ちゃん今日はずっと家にいるの?」と聞いた

 

1830分に駅にいれば平気!だから一緒に録画したラプンツェルみようよ!」

 

たしかさっき17時を過ぎた所だったはずだ

 

単純計算で1時間以上はここに居る事になる。

 

 

マンマミーア

 

こたつの中で僕は絶望した

 

さとみは「それなら一緒にご飯食べに外に行かない?」と聞いた

 

ファインプレーだ。

 

クッパを外に出す事が出来ればバレずに逃げる事ができる。

 

期待とは裏腹に、クッパはさとみに向かって、

 

「お腹空いてるだろうと思ってすき家でテイクアウトしてきたよ^_^

 

チクショウどこまで気が利く兄貴なんだよ

 

すき家をこたつのテーブルに置き、

クッパは僕が隠れているこたつに入ってきた

 

同時にさとみも急いでこたつに入った

 

 

 

おい、まじかよ

 

 

再度僕は絶望した

 

状況的にはこんな感じだ

少しでも体を動かしたらクッパに当たる。

 

僕はこたつの中で極限まで体を折り曲げた。

 

僕のクリキングはすっかり萎れて、

今や枝豆サイズまで縮んでいた。

 

僕の絶望とは裏腹にクッパはのんきに

「やっぱすき家は三種のチーズ牛丼だよなぁ

とか言いながらすき家を食べ出し、ラプンツェルを観始めた。

 

こたつの中で僕は今までの人生を振り返ってた

 

半径1メートル以内に僕を恨んでいるクッパがいるのだ。

 

体が恐怖で震えた。修羅場とはこの事か

 

熱かった。灼熱だった。

 

こたつの中だ、パンツ一丁だ。

熱風が僕の素肌にダイレクトアタックしてくる

 

咳もくしゃみも何も出来ない僕は

ただただじーっと固まっていた。

 

息が出来なくなってきた。

 

こたつの外の空気を吸いたい。

 

 

こたつの中で体勢を変えるのは非常に危険な賭けだった

さとみ側のこたつの布団を少しでもファサッってすれば、もしかしたらクッパに気がつかれるかもしれない

小心者の僕はそんな大博打は出来なかった。

 

僕は足りない頭で必死に考えた

 

 

それでもこたつの中はかなり熱かった。

外の空気が欲しい

何かないか、この現状を打破できる何かが

 

 

 

 

………ストローだ。

 

幸運なことに、脱いだ服と一緒にさっき作ったストローも僕は抱えていた

 

すぐにこたつの中から外に向かって僕はそのストローを出し、外との空気口にした

 

笑ってくれてもいい

けなしてくれてもいい

だがあの時の僕は本気だった必死だったのだ

 

必死にストローから入ってくる外の空気を吸い込んだ。

 

 

何分だっただろう、クッパはトイレに行った。

 

さとみは布団をめくり「大丈夫!?!?」と聞いてきた

 

「ハァハァハァハァダイジョウブジャナイ」

 

僕は汗を垂れ流し死にかけていた。

 

ストロー越しに来る空気量などたかが知れてる。

 

僕は軽い呼吸困難になっていた。

 

さとみの位置からだと僕がストローを使い息を吸ってるのが見えたと思う。

なのに、笑いもせず僕の心配をしてくれる

 

感情が込み上げてきた

 

今日本当に死ぬかもしれない。

 

僕は涙目でさとみに今までの感謝を告げた

 

「スゥ……いつもスゥハァスゥハァありハァがとうハァ

 

 

そこから記憶があまりない。

 

ジッとこたつの中で固まり、時間が過ぎるのを待っていて気がついたら寝ていたのだ

 

しばらく経ってさとみが僕を起こしてくれた。

 

「本当にごめんね。今からお兄ちゃんを駅に送ってくるから待ってて。本当にごめんね。」

そう言ってさとみは家を後にした

 

1時間を超える生死を賭けた緊張から解放された僕はもはや何も考えたくなかった。

 

パンツのままこたつの横で体操座りして、

壁に掛けられていた趣味の悪いチェーンをボーッと眺めていた。

数分経った。

僕は暗くなった部屋で服を着て、

僕の命を救ってくれたストローをすき家のゴミが入ったゴミ箱にぶち込んだ

 

結局使う事のなかったローションを片手に僕は帰る支度をした。

 

さとみからラインがたくさん来ていたが、見る気もせずポケットにいれた。

 

一刻も早くこの家から出たくなったのだ

 

玄関に向かうと僕の靴がなかった。

 

きっとさとみがクッパにバレないように咄嗟に隠してくれたんだろう。

 

まったく機転が利く女だ

この先もうまい具合に彼女なら生きていけるだろう

 

ブーブーブー

 

さっきからひっきりなしにさとみからラインがきていた。

 

靴棚の一番下にあった僕の靴を拾いながらさとみからのラインを確認した

 

 

 

 

 

「早く逃げて」

 

「逃げて」

 

「家からでて」

 

「はやく」

 

「逃げて」

 

 

ひっきりなしに「家から出て」

というラインがさとみからきていた。

 

意味がわからなかったが僕はすぐに外に出ようと思った。

 

長い戦いが終わる。

今日は家に帰ってラプンツェルでも観てゆっくりしよう。

 

 

 

ガチャッ

 

 

ドアノブに触れる前にドアが開いた

 

 

え?

 

 

坊主頭の男がスーパーのビニール袋をぶら下げて僕を見下ろしていた

 

 

 

だれじゃ貴様ああああああああ!!!!!

 

 

手にペペローションを持ったまま僕は呆然とその男を見上げた。

 

それは紛れもなくさとみの一番上の兄、ドッスンだった

 

 

 

 

END

 

 

 

後日談

 

一番上の兄が夜ご飯を作りに偶然家に来たみたいでした。

警察を呼ばれる可能性があったので僕は焦りつつも簡潔に、

 

1.さとみとおつきあいさせていただいてる野村です。

2.クッパさんにさとみと付き合ったらぶっ殺すと言われています

2.今日はクッパが家にいないと言われていたので僭越ながらご自宅で遊ばせていただいておりました

3.途中でクッパさんが帰ってきて急いでこたつに隠れました

4.こたつの中で死にかけました

5.クッパさんがさとみと一緒に駅に行ったので僕は帰ろうとした次第でございます

 

という事を土下座して涙ながらに話したら納得して許してくれました。

 

 

その後は?

 

あれから2年、僕は結局さとみと別れました。

 

この出来事が原因ではなく、その事件から1年以上真剣に付き合いました。

最後はさとみが長期留学に行く為に2人で話し合った結果、別れを選びました。

 

 

去年の冬、空港にクッパとドッスンと僕でさとみを見送りに行きました。

3人とも泣いていました。

さとみは笑っていました。

 

 

そのあと2人が僕を飲みに連れてってくれたのを一生忘れません

 

 

ありがとう。

 

頑張れさとみ

 

 

これが僕の人生史上、

一番タイミングが悪い話です。

 

Fin.

 

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