【ドラえもん】のび太がジャイ子を殺して死刑になる話

 

それから武さんが語ったことは、ほぼ私の予想通りだった。
時空の歪みに迷い込み、私達の子供時代――過去――からこの時代に時間旅行して来てしまったジャイ子ちゃんは、運命の悪戯か、この時代の、売れっ子漫画家になった大人の自分と遭遇した。
大人のジャイ子ちゃんは、おそらくすぐに、目の前の子供が昔の自分だと気付いた。
そして取り合えず自分のマンションに子供のジャイ子ちゃんを連れ帰り、食事を与えた。
マンションに残されていたカレーが甘口だったのは、それを食べるジャイ子ちゃんがまだ子供だったからだ。
それから大人のジャイ子ちゃんは、子供のジャイ子ちゃんが現れたことで、これからどうしたらいいか悩んだ。
元の時代に帰そうにも、手段がない。
彼女は日頃からの相談相手、のび太さんに連絡を取った。
わざわざ来てくれるのび太さんのために寿司を注文し、彼がマンションを訪れるのを待った。

そこで、大人のジャイ子ちゃんと子供のジャイ子の間にトラブルが起きた。
口論の末、子供のジャイ子ちゃんは、大人のジャイ子ちゃんを刺し殺してしまった。
凶器が包丁ではなく、キッチンハサミだったのは、単純に子供のジャイ子ちゃんの身長では、陳列されている包丁に手が届かなかったからだ。
そしてタイミング悪く、のび太さんが現場にやって来た。
のび太さんは一目見て状況を理解し、泣きじゃくるジャイ子ちゃんを宥めた。
心配しなくていい、自分が助けてやると、ジャイ子ちゃんを励まし、すぐに行動に移った。
返り血を浴びたジャイ子ちゃんを着替えさせた。
クローゼットからワンピースが一着なくなっていたのは、凶器の血を拭き取るためではない。
子供のジャイ子ちゃんでも着られる服を探したら、そのワンピースしかなかったからだ。

それからのび太さんはジャイ子ちゃんを連れ、マンションを飛び出した。
その際、宅配寿司店のスタッフに目撃されてしまった。
一緒にいたジャイ子ちゃんの姿まで捉えられずに済んだのは、彼にとって幸運だったのか不幸だったのか。
とにかくのび太さんは、自分が殺人を犯したことにして、子供のジャイ子ちゃんを逃走させることに成功した。

武「事件があった夜、突然のび太が子供のジャイ子を連れて俺の前に現れたんだ…」

武さんが語る。

武「びっくりしたよ。それから、なんとかしなきゃと焦った。殺されたのはジャイ子、そして殺したのもジャイ子。どっちも俺の大切な妹だ」

武「いきなり別の時代に飛ばされ、まだ子供なのに殺人の罪に問われるジャイ子を思ったら、俺は不憫に思えて仕方なかった。なんとしてもジャイ子を守らなきゃと思った」

武「幸いなことに、子供のジャイ子はショックから、自分が殺人を犯したことを忘れている。清らかな心のままだった。ジャイ子が元の時代に戻る術はない。ならばここで、この時代で、子供のジャイ子を俺が面倒見ていこうと思った」

スネ夫「それで…勤務先のこの病院に子供のジャイ子ちゃんを入院させたんだね…」

武「ああ…」

しずか「そしてのび太さんは、ジャイ子ちゃんの犯行を、すべて自分のせいだと言ったのね」

武「のび太は逃走現場を見られている。いずれ疑いの目は自分に向くだろうと言った。そして、こうなったのは自分のせいだから、ジャイ子の罪を自分に被らせて欲しいと俺に頼んできた」

スネ夫「なんでのび太のせいなんだよ。のび太は犯行現場に遅れてやって来ただけだろう?」

武「……」

しずか「スネ夫さん、あなたも思い出再生機で子供のジャイ子ちゃんの記憶を見たのなら、想像出来るんじゃない?」

スネ夫「ちっともわかんないよ」

しずか「子供のジャイ子ちゃんは、大人になった自分が、思い描いた通りの人生を歩んでこなかったことに気づき、失望したのよ」

武「ああ…のび太も同じことを言っていた」

しずか「一番の違いは作風ね。子供の頃、ジャイ子ちゃんは少女漫画家になるのが夢だった。だから大人の自分に遭遇し、売れっ子漫画家になっていると知り、とても喜んだ」

しずか「しかしいざその作品を見せてもらうと、自分の想像とはかけ離れたものだった。過激で暴力的な内容に、子供のジャイ子ちゃんはショックを受けた」

しずか「たぶんその時彼女は、裏切られた気分だったんじゃないかしら。子供のジャイ子ちゃんは激昂し、大人の自分を刺し殺してしまった」

武「ジャイ子はかなり前から、自分の本当に描きたいものと、周囲から求められるものの違いに、悩んでいたよ。それで何度ものび太に相談していた。兄である俺は医師の仕事に追われ、ろくにジャイ子の話を聞いている暇などなかったからな」

しずか「のび太さんはジャイ子ちゃんになんてアドバイスしていたのかしら…」

武「のび太のアドバイスは堅実だったよ。今は世間から求められるものを描いて、自分の地位を高めるべきだとジャイ子に言ったらしい。ある程度の地位や名声を得られれば、そのうちわがままが通るようになる」

武「有名になって、後はわがままに自分の描きたいものを描けばいい。のび太はジャイ子の近頃の作品より、昔のベタベタな少女漫画のほうを評価していたから、そのアドバイスはのび太にとっても辛かったと思うけどな」

しずか「その結果、ジャイ子ちゃんは売れっ子になったけれど、それは子供のジャイ子ちゃんが思い描いた未来とは違うものだった。子供のジャイ子ちゃんは、大人の自分にも、少女漫画を描き続けていて欲しかった」

武「こうなったのはすべて自分のアドバイスが招いた悲劇だとのび太は言った。こんなことになってすまないと、のび太は泣いて俺に詫びた。俺はそんなのび太を責める気になれなかったよ」

武「忙しさを理由に、ジャイ子の相談を無視し続け、のび太に任せきりにしていたんだからな。俺はジャイ子の兄失格さ」

しずか「のび太さんはせめてもの償いにと、自分が罪を被ることにしたのね」

武「ああ…そして俺はそののび太の申し出に甘えた。大人のジャイ子が死に、だけどまだここには子供のジャイ子が残っている。俺は今度こそジャイ子を失いたくない。警察になんて引き渡したくない。俺の手元に置いておきたい」

武「だから俺は、優しいのび太にすべてを押し付けたんだ。のび太を利用したんだ。俺は…俺は最低だよ…」

武さんは拳で何度もフェンスを殴り、ぽろぽろと涙を流した。

スネ夫「ねえ…これからどうしよう…」

スネ夫さんが途方に暮れた様子で、誰に言うでもなく呟いた。
私にはもう時間がない。
だから、武さんに言った。

しずか「タイムパトロール隊に話はつけているわ。ジャイ子ちゃんも、そしてロクちゃんや他に裏山で保護されたみんなも、全員元の時代に帰れる」

しずか「元の時代に戻ってしまえば、法律はジャイ子ちゃんを罰せられない。だからどのみち、あなたの前からジャイ子ちゃんはいなくなるの。ごめんなさい武さん、勝手に話を進めてしまって…」

武さんは目を丸くして、私を見た。

武「本当かい?じゃあジャイ子が警察に捕まることはないんだな?」

しずか「ええ。真犯人であるジャイ子ちゃんはこの時代から姿を消す。そして、のび太さんを救うにはどうすればいいと思う?」

武「それは…俺だ…」

スネ夫「まさかジャイアン…」

スネ夫さんもようやくここで気づいたみたいだ。

 

武「ジャイ子はいなくなる。俺はもうジャイ子に会えない。だったらもう未練なんてないよ。俺はジャイ子の兄だからな、妹のやったことは兄の俺が責任を取る。俺はもう現実から逃げない。傷つけちまった心の友を救えるのは、俺しかいないんだよ」

しずか「武さん…」

武さんはもう泣いていなかった。
そこにいるのは、ただ妹と友人を思う、哀れな男だった。
だけど私は、絶対に武さんをこのまま哀れな存在にはしない。

武「もっと早くにこうするべきだった。ありがとよ、しずかちゃん、スネ夫、最後に二人と話せて良かったよ。俺は今から警察に出頭する。俺は今から大悪人になる。実の妹を殺して、その罪を友人に擦り付けた、極悪非道の男になるよ」

スネ夫「ジャイアン…ぼ、僕は…どんな手を使ってもジャイアンを助ける。少なくともジャイアンを非道な人間になんかしない。昔からこういうのは得意なんだ。世間がジャイアンに同情するような背景をでっち上げてやる!」

スネ夫「そのためにはどんな嘘や汚い手だって使うぞ!えらい人間にたくさん媚びて、金もバラまいてやる!覚悟しとけよジャイアン、君は一生世間から悲しき英雄だと思われるんだ!君の裁判には女性ファンが殺到するようになるぞ!」

スネ夫「どうだ悔しいか!子供の頃にたくさん殴られた仕返しだ、これからは君の評判を僕が左右してやるんだからな!うわぁぁん…

 

スネ夫さんはそれから馬鹿みたいに声を上げて泣いた。
それを見て、武さんは笑っていた。
私たちはやっと、子供の頃のように戻れた。
虚勢や建前を取り払って、馬鹿で無防備な心のまま、向き合えた気がした。

しずか「私、ジャイ子ちゃんに会ってくるわ」

私はひとり屋上を出た。
女の子がいると、男の子同士はうまく話せないんだって、大人になった今ならわかる。
武さんとスネ夫さんが二人きりで何を話すのか、少しは気になるけれど。

しずか「ジャイ子ちゃん?」

病室に顔を出すと、ジャイ子ちゃんが歓声を上げた。

ジャイ子「お姉さん!見て、これ」

スケッチブックを向けられ、私は彼女が描いた絵を見た。
繊細で美しいタッチの絵。

しずか「とても上手ね」

ジャイ子「あたい将来は漫画家になるのよ」

ジャイ子ちゃんが得意気に言った。

しずか「あなたならきっと素敵な漫画家になれるわ。だけど知ってる?漫画家さんはすごく大変なお仕事なのよ」

ジャイ子「大丈夫よ」

しずか「ジャイ子ちゃん…」

私はジャイ子ちゃんに目線を合わせた。

しずか「どうか挫けないで。どうか自分を信じて。あなたはあなたが信じるものを描き続けて。お金や名声なんかに、自分の魂を売り渡したら駄目よ。どうかそういう、心の強い漫画家さんになってね。そうすれば未来で、あなたのお兄さんを救うことに繋がるから」

武さんとスネ夫さんが病室に入ってきた。

武「そろそろ行くよ…」

武さんはベッドに近づくと、無言でジャイ子ちゃんを抱き締めた。
ジャイ子ちゃんはちょっと鬱陶しそうにしていた。
私たちは並んで病院を出、そこで別れることにした。

スネ夫「ああもう足がクタクタさ」

武「二人ともありがとな。のび太にも伝えてくれ。悪かったってさ。それからのび太の力になってやってくれよな」

スネ夫「もちろんさ」

武「じゃあな…」

武さんが片手を挙げる。

しずか「待って武さん!」

武「ん?」

しずか「武さんは…ロクちゃんの包帯の下の素顔を見たの?」

武「いいや、見てないよ」

しずか「そう…」

武「しずかちゃん?」

しずか「さようなら武さん、スネ夫さん、いつかまたどこかで」

私は二人の前から駆け出した。

スネ夫「あれ?しずかちゃん送ってくよ?おーい…」

背後でスネ夫さんの声がする。
追いかけてきても、どうせ私はつかまらない。
私はずっと、自分が嫌いだった。
平凡な能力しか持たず、そのくせ自意識ばかり高くて、傷つくのを怖れ、いつも自分を守ることばかり考えていた卑屈な自分。
何も出来ず何もしようともせず、小さく丸まって生きる自分が、大嫌いだった。
だけどいざ消えるとなると、やっぱり寂しい。
私は、おおむね幸せだったんじゃないだろうかと思えてくる。
最後に彼の助けになれるようなことが出来て良かった。
それだけで、私の人生にもちゃんと意味があったのだろうと信じたい。
今なら私は少しだけ、自分を誇れるような気がする。
ああ、だけどもう体が消える。
思考が止まる。
もう、さよならの時が来た。

……………………………………

………………………………

……………………………

……………………

 

いつも通り病院に向かうと、顔見知りの看護師が声を掛けてきた。

看護師「あら?野比さん、素敵なお花ね」

僕は両手に抱えた花束を少し揺らして見せた。

のび太「ええ、綺麗でしょう?彼女、花が好きだから」

そう言ったところで、強く肩を叩かれた。

武「ようのび太、これからデートか?」

振り返るとそこに、白衣姿のジャイアンが立っていた。

のび太「ああジャイアン!あ、そうだジャイ子ちゃんは元気?」

武「毎日居間で漫画描いてるよ。今度こそ賞を取るんだと。今時少女漫画なんか売れねーって言ってるのによぉ」

のび太「いいじゃないか。僕はジャイ子ちゃんの描く少女漫画、好きだよ」

武「まあ俺も嫌いじゃないがな」

ジャイアンはそう言って、大口を開けて笑った。
妹のために毎晩少女漫画を読み漁り、創作の相談に乗れるよう頑張っている彼に、かつて周囲を震え上がらせたガキ大将の面影はない。
ジャイアンの姿をみとめた小児科を受診する子供達が、わらわらと集まってきた。
優しい彼は、すっかり子供達に懐かれている。
ジャイアンは子供に囲まれ、困ったような照れ臭いような笑顔を浮かべた。

武「のび太、まあまた今度ゆっくり話そうぜ!あ、こら、先生の白衣を引っ張るんじゃない!わかったわかった、遊ぶから!」

のび太「うん、またなジャイアン」

僕は606号室を訪れた。
ベッド脇に、高そうなチョコレートの箱が置かれている。
きっとスネ夫が来て、残していったのだろう。
僕は彼女に近づくと、その手に花束を握らせた。

のび太「ほら、いい香りがするだろう…」

彼女はやはりぴくりとも反応しなかった。
幼い頃、裏山でぼおっと座っているところを保護された彼女は、それきり口を利かず、自発的に動こうともせず、人形のようになってしまった。
この症状は、大人になった今も続いている。
保護された時、彼女は怪我をしており、それを誰かに手当てしてもらった痕跡が見られたが、彼女が口を利かない限り、あの日裏山で何があったのかはわからない。
医者は何かのショックで心が壊れてしまったのでしょうと見解を示し、彼女がいつか回復するか、ずっとこのままなのかはわからないと告げた。

のび太「そうだ、今日は君に見せたいものがあるんだ」

だけど僕は信じている。
彼女はきっと治る。
そうしてまた僕に、あの下手なバイオリンを聞かせてくれるのだ。

のび太「試作品だし、ミニサイズだけど…」

握った手を開くと、ミニドラが飛び出し、彼女のベッドの上を走り回った。

のび太「これをさらに改良すれば、いつかきっとドラえもんが出来るはずさ」
ミニドラは彼女の肩に飛び乗り、彼女はただぼんやりと宙を見ていた。

のび太「なんてね。実際はまだまだ道のりは険しい。このミニドラだって、充電式で、稼働時間は一時間が限界だし」

僕は立っていって、窓を開けた。
心地よい風が、薄いカーテンを揺らした。
ミニドラはどうも走行音が大きすぎる。
僕はそろそろ引き上げたほうがいいだろうと判断し、ベッドを振り返った。
そうして僕は、自分の頬に温かなものがつたうのを感じた。

ミニドラ「ドラ!ドラ!」

ミニドラは彼女の手のひらの上で、はしゃいでいた。
それを見て、彼女はくつくつと楽しげに肩を揺らしていた。
僕は彼女の名を呼んだ。

のび太「しずかちゃん…」

彼女が僕を見る。
僕たちは十数年ぶりに、視線を合わせた。

―end―

引用:https://matome.naver.jp/odai/2137844657713631701?&page=4

 

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